キッチン おり江
「隠れた名店」とは、まさにこういう店のためにある言葉なのだろう。JR南越谷駅より徒歩8分。旧4号線沿いの南越谷病院すぐ手前に、出来合いの材料などは一切使わない、こだわりの洋食屋はある。
オレンジ色のちょっとレトロな感じの外観は、どこか懐かしさを感じさせる。それもそのはず、このお店はこの地に根付いて既に約50年という、老舗中の老舗なのだ。
元々オーナーのご実家が都内で和菓子屋を営んでいたが、空襲で家を失い、各地で修行を積重ねて昭和35年にオープンしたのだとか。
「当時は全く田んぼの中の一軒家だったんだけどね、たまたま寄ってくださった方々にご贔屓にされてやってきました」とオーナー。中には、生まれたばかりの小さな頃から家族と訪れており、現在49歳の常連さんもいるというから驚きだ。
中に入ると、程よい広さの店内にぷ~んといい香りが充満している。長年、この香りの中に立ち続けてきた人形も“いい味”をかもし出しているし、50年選手の黒電話も微笑ましい。この味わいは、そんじょそこらのファミレスなんかじゃ出せない味だろう。


この店にはいろいろあるメニューの中で、4つのオリジナルメニューがある。「オリジナルハンバーグステーキ」「牛肉と野菜のスタミナ炒め」「豚ロースの味噌漬け焼き」そして「ポークチャップ」だ。680円という値段ながらボリューム満点の「日替わりランチ」にも心を惹かれたが、オリジナルメニューと聞いては頼まない手はないということで、この日は「ポークチャップ」を注文した。ポークチャップは骨付きの豚肉を使用するのが正式なのだそうだが、この店では美味しさを増すために豚のロースを焼いてトマトソースで煮込んだものとなっている。それが、熱々の鉄板の上でジュワジュワと音を立てながら登場してくるものだからたまらない。さらに、その肉の大きさと厚さ。1.5cm以上は確実にあろうと思われる分厚い豚肉が、鉄板の上で鎮座しているのだ。
しかしこの肉、見かけとは裏腹に、ナイフを入れると驚くほど柔らかい。口に頬張ってみても、こんなに大きく分厚いのに、筋ひとつない。焼き加減も文句なしで、噛み締める度に口中に肉汁が溢れ出す。そして脂身の甘さがトマトソースの酸味に絶妙にマッチしている。

実を言えば私は、肉の脂身はあまり得意でない。しかし、この脂身は全く臭みもなく、クドさもなく、実に美味しいのだ。何か今流行のブランド豚を使っているのかと思ったが、全く普通の国産豚だとか。
「豚肉はね、98%本物を見抜く自信はあるよ」というオーナー。聞けば、大使館の一等秘書官付きのお抱え料理人として腕を振るっていた時代もあったそうで、実力は折り紙つきなのだ。

全て国産品だけを厳選して使っているという付け合せも、一品一品実にいい仕事がされている。2時間煮込んだニンジンもそうだが、フライドポテトなどは一口食べれば実にいい香りが鼻腔をくすぐる。卓上に置いてあるテーブルソースやドレッシングなども、全て手作りというから料理のこだわりは半端ではない。本当に“箸が止まらない”というのは、このことを言うのだろう。あっという間に平らげてしまった。
何十年と通う常連さん達に支えられているという“キッチン おり江”。その常連さん達の中には、横須賀から来る人もいるのだそうだ。特に11種類の香辛料を使いルーからつくるカレーは、「10年前にフラッと寄って食べたここのカレーの味が忘れられなくて」と来る人もいるという。
「別に特別な事をやってる訳じゃないんだけど、ウチはレシピを忠実に守って作ってるからね、何年後に来ようが味が変わらないんだ」とオーナー。頑固に、そして丁寧に本物の味を守り続けているのだ。熟達した技が造り出す本物の味を味わいたい方は、ぜひ一度行ってみることをお薦めする。自然に顔がほころんでくる美味しさを体験できるだろう。
キッチン おり江
越谷市南越谷1-4-68
TEL: 048-986-3290
営業時間:11:30~14:00・17:30~20:30 (ラストオーダー 20:30)
※日曜・祝日 ディナータイムのみ
定休日:毎週木曜
メニュー例:
日替わりサービスランチ…680円
スープ…580円
オリジナルハンバーグステーキ…1,050円
ツーショットライス…840円
豚ロース肉の味噌漬け焼き…1,630円
ポークチャップ…1,630円





