虎の蔵

大門地区の国道463線沿い、コンビニの裏側あたりにひっそり佇んでいる民家風の店舗が「虎の蔵」だ。その雰囲気はまさに“隠れ家”で、小さな戸をくぐるとスタッフの温かい挨拶に迎えられ、なぜだか自宅に帰ってきたような安堵を感じてしまう。店内はカウンターだけかと思いきや、奥に進めば6卓ばかりのテーブル席と個室がひとつ。細長い店舗がいかにも長居を誘いそうな雰囲気だ。

“蔵”というよりは“穴”という感じのユニークな空間ではあるが、そこで頂ける料理も負けず劣らずユニークだ。基本的には無国籍の創作料理が中心で、虎の蔵の約10年の歴史で提供されてきたメニューから、評判の良かった品を残しているので、いわゆる“外れ”のメニューというものは無い。どのメニューも看板商品となりうる店の自信作だ。

中でも女性客を中心に支持されているのがこちらの「カルボナーラ風石焼きご飯」(1,100円)。石焼ビビンバ用の器に米を入れてテーブルに持ち、目の前で卵、キムチ、生クリーム、チーズ、ベーコンを入れ一気に加熱する。演出だけでも楽しいのだが、これがまた美味。キムチの酸味がミルク系の素材とほどよく一体化し、濃密感とコク深さにあふれた仕上がり。言葉で表現するのは難しいが、リゾット風の石焼ビビンバという雰囲気だろうか。訪れたら是非食べていただきたい一品だ。

「明太ポテトのチーズ焼き」(680円)はポテトを大きくざっくりカットし、チーズと明太子でグラタン風に焼き上げたもの。チーズだけだと重くなりがちなところを、明太子の酸味が軽やかさを、粒感が食感の楽しさをプラスしている。小さめの器ながらボリュームも十分なので、男性客にも評判が良いという。

サラダは各種あるがいずれも500~600円台と手ごろでボリュームも十分。「じゃがいものカリカリ和風サラダ」(500円)は食感のコントラストが楽しい一品だ。

刺身は季節折々で内容が変わるが、女将が自ら市場に出向いて目利きしたものしか使わない。写真の内容は約2,500円相当の盛りということだが、予算に応じて盛り合わせてくれるので安心だ。魚以外の食材も配達は一切使わず、店頭に出向いて手に取って確認しているということ。安心して食べてもらうためには手間を惜しまない、食に対する真摯な姿勢がこの辺りにも表われている。
このほか、秋田出身であるという女将は秋から冬の季節メニューとして「きりたんぽ」を登場させ、例年好評を博しているという。これは“あきたこまち”を素材に女将の手で潰し、成型していく真心のこもった品。きりたんぼ鍋のダシには比内地鶏を使うなど、秋田への郷土愛が一杯に詰まっているそうだ。季節が合えば、こちらも是非食してみて欲しい。

車社会の美園近辺にあって、郊外型の居酒屋業態であった虎の蔵。かつてはお酒中心の利用も多くあったそうだが、昨今では料理を楽しみに訪れるお客さんが増えたという。今でも種類豊富な焼酎と、ニーズに対応してさらに磨きをかけられている、ユニークな一品料理の数々。この店を訪れるならはやはり、料理とお酒の両方を存分に楽しんでほしいと思う。平日の昼間にはランチ営業も行っており、セットメニューでも800円から1,500円程度。まずはランチで店の雰囲気を知るのも良いかもしれない。「とっておきの店」として秘密にしておきたくなる、不思議な魅力にあふれた店である。
虎の蔵
住所 埼玉県さいたま市緑区東大門2-5-2
電話番号 048-812-1908
営業時間 11:30~14:30(13:30LO)、17:00~24:00(23:00LO) ※昼営業は平日のみ
定休日 日曜日















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